笑いの侵入者 阿刀田高 編

笑いの


日本ユーモア文学傑作選1と副題が付いているように,日本文学の中から阿刀田氏が「ユーモア」のある短編を13編選んでいます。どれも読み応えのある傑作ばかりだと思いました。最初の「序文」清水義範から笑わせます。普通「序文」とあるとこの本の内容に触れたものと思いますがこれはしっかりとした短編なのです。しかも「英語の語源は日本語である」という説をあたかも論文でも書くかのように論じているのです。nameを日本語の発音のnamaeとの類似性,killは斬る,dullはだるい,boyはboya(坊や)などなど日本語が起源になっていると説いていきます。ここまでいくと笑いではなく一瞬,「本当では?」と読者を思わせるところが「ユーモア文学」なのでしょう。

また「南神威島」西村京太郎 なども傑作短編でしょう。この島に「しかたなくやってきた」若い医師と島民との奇妙な触れ合い?接触?が読むものをはらはらさせるとともに,ニタリさせるところが随所にあり,飽きさせない作品になっています。今でも日本本土のことを「ヤマト」と島民たちは呼び,「マグハイ」という奇妙な歌を常に歌う。時代錯誤的な習慣が残っている島なのです。最後に島を離れるときの送ってきた船の中での島民とのどんでん返しもハッとさせる終わりかたなのです。