笑いの双面神 阿刀田高 編

笑いの双面神

「日本ユーモア文学傑作選2」1に続いて13編を収めています。どれも短編でキラリとひかるものばかりです。「真夜中の訪問者」横田順弥 は夜中にアパートに「横断歩道」が訪ねてきて結婚してくれと頼むという荒唐無稽なはなし。結婚しなければ全国の横断歩道がクーデターを起こして待遇改善の怒りをぶっつけるというのだ。なんともすごい設定から始まる短編。
「夜のグリコ」村松友視 大阪道頓堀川にあるグリコのネオンの裏のビルの話。その1階から4階までの飲み屋に少女がやってくる,家に帰らず1泊する,翌日は動物園に行く。そして幽霊のようにいなくなる,ネオンの裏の店と少女との出会いを描いている。

「車掌の本分」かんべむさし これは教材にもなっている,サルを訓練させて運転手と車掌とで列車を走らせるようにする。まもなくサルたちはこれをマスターするが,人間は人気の出てきた,列車を走らせる回数と列車数を増やしていく。まもなくサルは人間の言うことを利かなくなる。人間は酷使しすぎたからだと思う。一方サルたちは,長くなった列車では安全を確保できなくなってきたのであって,それができないのでやめたのである。ようするに「車掌の本分」を果たせなくなったからだという。人間のほうからとサルのほうからの考えの違いを奇妙に表している名作です。