生き物をめぐる4つの「なぜ」 長谷川眞理子

生き物をめぐる4つの「なぜ」 (集英社新書)

生き物をめぐる4つの「なぜ」 (集英社新書)

まずこの4つの「なぜ」という言葉です。これは動物の行動については4つの異なる「なぜ?」が存在しているということです。オランダの動物行動学者のニコ・ティーンバーゲン(Nikolaas Tinbergen)が言ったことで1)至近要因 その行動が引き起こされている直接の要因は 2)究極要因 その行動はどんな機能があるから進化したのか 3)発達要因 その行動は動物個体の一生の間にどのような発達たどって完成されるのだろうか 4)系統進化要因 その行動はその動物の進化の過程でその祖先型からどのような筋道をたどって出現してきたのだろう
photuris 

とても面白しろかったのは「ホタル」の話です。北アメリカのフォツリス(Photuris)というホタルは,求愛のために発光するのはあたりまえですが,他のホタルを食べる肉食性のホタルなのです。発光パターンは同種で同じなのですがこの雌のホタルは,いく種のパターンの発光ができ,同種の雌だと思ってきた雄を食べてしまうのです。しかし,自分の交尾のときは同種の発光をして交尾する,終わると他の種の発光を始めて雄を食べる。これでは雄はかわいそうですが,これまたうまくできているもので,雄にも最低2種の発光パターンがあり,えさを欲している雌のパターンに合わせ,食べにきた雌を逆に捕らえ強制交尾するというのです。まさに騙し騙されの世界です。暗闇にぼーっと光っているホタルは風情がありますが,このような冷酷な騙しあいが潜んでいるのです,人間の世界のことを,考えられる人も多いのでないでしょうか?