真鶴 川上弘美 真鶴作者: 川上弘美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/10/30メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 25回この商品を含むブログ (171件) を見る

芥川賞谷崎潤一郎賞を受賞した作家、川上弘美の世界が描かれています。中年の女性(どうも物書きで生計を立てているよう)柳下京は百という娘と母親の女三人で暮らしている。現在は青慈という編集者と不倫をしている。数年前に夫であった礼は突然失踪する。その夫を忘れようとするが忘れられない。礼のメモ、「真鶴、21:00」真鶴(まなづる)というひびきにつられ駅を降りる。幻想か、おんながたびたび現れる、「真鶴のおんな」ははたしてなにものだろう?京自身の分身なのか、失踪した礼とどういう関係にあるのか?二次元の世界、三次元の世界?いろいろなものが錯綜して話が進んでいきます。なんとも霧がかかったような、オブラートに包んだような世界があります。息苦しくなったり、青慈との情交が生々しく現れたり、礼が現れたで不思議な物語です。この物語はどういう話かというより、どのように感じるかと問いただしたほうがいいようです。本の装丁がいいです。高島野十郎「すもも」岸田劉生を思わせる具象画にタイトルと作者名だけがあります。この画家もディープで孤高な人だったようです。