豊かさの精神病理 大平 健

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豊かさの精神病理 (岩波新書)

豊かさの精神病理 (岩波新書)

精神医学を専門とする著者が、精神科に相談に来る患者さんの例を挙げて現代「豊かさ」とは何かを教えてくれています。小物、物欲にこだわる私には痛い警鐘でありました。まず、序章の「モノ語りの人びと」の扉絵からショックでした。そこにはLLビーンのトートーバックの写真から載っています。ある若いOL、患者がある人との付き合いで悩んでいるのです。そのいじわるする?オバサンは「若ぶって、LLビーンのトートーバックで会社に来て、靴もオイルド、モカシン履いて、会社でパンプスに履き替る」人らしいのです。患者自身もモノにこだわるのだがそのようなオバサンが、そのような格好でくることに我慢ならないらしい。私が海に行くときの格好がそのオバサンそのものの格好なのです^^;しかもLLビーンのトートーバックには自分の名の刺繍まで入れています。格好から入る私としては痛い序章でした。この格好は海に出るときはいいと思うのですが・・。これらのモノにこだわる人々を「モノ語り」の人びとと著者は呼んでいます。

現代のモノにあふれる中、特にブランドにもこだわる人々に警鐘を与えています。そのような人々はそのモノについて語るとき雄弁になり、自分がいかにそれらを持っているかを語るのです。患者さんの例がいろいろと出ていて面白いのです。患者自身もモノに憑かれています。そんな人がポリシーもなくブランド物を持っていたり、着ている人に我慢ができないようです。「会社にスーツでリーボック履いてきて、卑弥呼に履き替え、洗面所でティファアルゲばかりして、カルティエのスリーゴールドして・・」といろいろと相手がいかにポリシーもなく持っているモノに攻撃するのです。「足が細く長い人がはくとサマになるのに」「カルティエも下品で会社にしてくるものではない」

そのような「モノ語り」の人々が多くなった、それが「グルメにも始まり、恋人(マネキンのような人や、人形のような人)にも形から要求する」それからペット、それに子どもにまで。「モノ語り」の人々は、人付き合いの上での葛藤や課題に解決できないで精神科を受診する。モノ化によって人々との葛藤を軽減している。すこしでもその葛藤がうまくいかないと悩む。物欲に悩む?私には笑ってすませることができませんでした。極めつけは、患者、OLは典型でした。外資系のOLでスカーフが好きでいろいろと気のある人からスカーフをもらうのですが、人を名前では覚えないでスカーフのブランド名で覚える。オーニシ、シマダ、ビギ、メルローズエルメスバレンチノ、ベルデ・モンテ、モスキーノ、ジュンコ・シマダ・・」ああ、あなたは彼女らに何て呼ばれているのでしょうか?「あのエルメス君もむりしちゃてディオールぐらいからいいのに!」ここに来て杉浦日向子氏の「物を持たない、悩みをもたない、出世をしない」江戸処世術に学ばなければいけない自分を見い出したのでした。


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