文士の生きかた 大村彦次郎

文士の生き方

「文士の生きかた」というタイトルではありますが「文士の生きざま」とした方がよさそうな壮絶な一生を描いています。著者は元雑誌編集長であった強みから、いろいろな作家のことを詳しく知っています。「文壇読物」を書いたと言っているとおり、ここに登場する13人の文士は、戦前戦後を通して、喜怒哀楽、特に何人もの愛する人々との葛藤や生活苦などを周りの人々のことを含めて描かれています。13人とは「芥川龍之介葛西善蔵嘉村礒多直木三十五徳田秋聲近松秋江葉山嘉樹宇野浩二久保田万太郎谷崎潤一郎、高見 順、山本周五郎和田芳恵

昔は許容されたであろう愛人との生活、不倫、これでもかというほど記録されています。谷崎などは生涯何人もの女性遍歴を繰り返しています。「福子、偕楽園の女中、新川の内儀、千代、初子、せい子、丁未子、松子」有名な佐藤春夫との「夫婦交換」事件?なども起こしています。最近の文士にはこのような人は少なくはなった?と思いますが多くの女性の影、涙の元で名作「春琴抄」「細雪」と言われたものが発表されていったのですね。「果たして芸術の名において、一人の女性の幸福が小草のように踏みにじられていいのか」これは許されること?最近でも梨園にはまだ残っている感じがしますが・・。