エビと日本人 村井吉敬

エビと日本人 (岩波新書)

エビと日本人 (岩波新書)

エビ,かにほど日本人が好むものはありません。昔は高級食品だったのが現在ではすぐに手に入ります。それには9割を輸入に頼っている現状があります。そんな中,どこでエビが獲られ,どのように加工されて日本に届いているのは知られていません。その実態を明かすことによりエビと日本人のかかわり,世界とのかかわりを知ることになります。輸入食品のダントツはエビですがその末端価格から消費者に渡るまでの価格には驚きがあります。インドネシアの漁民が獲って手にした価格は770円/kg それが日本のスーパーで買うと4,000円/kgになっています。最初の770円は,純利は300円ほどだとも言います。どれほどの搾取のもとでエビが獲られているか分かります。原住民はそんな中でも,自分たちはエビを食べることはできないのです。よく比較されるのにバナナの輸入があります。これも現地農民の,激務の中から生産されたものが私たちに届いています。

(世界のエビ分布と日本のエビ輸入相手国)

エビが遠い第3世界で獲られ,日本まで運ばれるに大量のエネルギー(石油)も使われているとも言います。トロール船で獲られ,エビ40トンを想定すると,エビ1kgに対して石油10kgが必要になる。このほか冷凍加工や輸送にかかるエネルギーがかかる。マグロ漁では「マグロ1トンに石油1トン」と言われているがエビはその比ではないようです。このように多くの犠牲?天然資源を使ってわれわれの手元,口元にエビは届けられています。日本がエビ輸入を拡大させていることで,現地の雇用創出,外貨獲得に貢献はしているが,マイナスもかなりあるのです。現地の外貨の獲得でもその分配は均等でなく,エビ成金を作り,今でも冷凍加の女工さんは1日100−200円で働いている。エビを獲るために一緒に獲れる「くず魚」は海に捨てられ,資源の無駄,エコロジー問題を起こしている。また資本制漁業が伝統漁業を破壊している。乱獲,くず魚投棄。マングローブ林の破壊,運送時,エビ黒変防止のための薬剤投与,などなど飽食日本へエビが届くためには,様々な犠牲のもとに成り立っていることを再認識することが必要なのです。