モンゴルに暮らす 一ノ瀬恵

モンゴル

モンゴルに暮らす (岩波新書)

モンゴルに暮らす (岩波新書)

第69代横綱白鵬 翔(はくほう しょう)が決まりまさに相撲界はモンゴル横綱に占められてしまいました。この本の口絵もあでやかな衣装をつけて「モンゴル相撲」をとっている写真から始まっています。作者,一ノ瀬恵(現在は呉人恵)留学生としてモンゴルに行き,そこで現地の人と結婚した人です。その当時いかに結婚が難しいことかも書いてあります。現在は富山大学助教授。ご主人はトゥグス氏。現在のモンゴルとは違って当時(1980年代)は民主化されてない,様々な活動にも監視の目があった時代です。そんな中,留学生として,女性として初めてモンゴルへ行った気持ちはどれほどのものであったでしょうか?「天井のない監獄」と形容していますが,モンゴルの草原ですら自由に見ることはできなかったようです。

「バヤルララー」(ありがとう)はモンゴルではあまり言わないようです。日本人やアメリカ人はなにかあると「ありがとう」と言いますが,モンゴルでは普段耳にしないし,言わないのだそうです。横柄や傲慢,礼儀知らずだとも思われがちですが,モンゴルではそういう風習だと思わなければいけないのだそうです。「郷に入っては郷に従え」で厳しい風土に暮らしていくためにはお互いに助け合って生きていくのが当たり前で,それに「ありがとう」と言うまでもないことだそうです。見ず知らずの家でお茶や食事,さらには宿を提供されることも珍しくないことと言うのです。われわれ日本人は,容姿も似ているモンゴルの人々に,相撲ばかりではなく,どのように生きるかも学ぶことがあるようです。