華麗なる一族 下巻 山崎豊子

華麗なる一族 下巻

華麗なる一族(下) (新潮文庫)

華麗なる一族(下) (新潮文庫)

最終巻を怒涛のように読み尽くしました。気になるところは最期はどうなるのか?という筋立てではありますがTVで見たのとは違う、原作の味を確かめながら読む楽しみもあります。鉄平の阪神特殊鋼の火災事故からどんどんと経営が傾いていく、父、大介はそれを援助しようとはしない。それ以上に銀行間の合併を推し進めていく工作が、悪玉、善玉と分かれて(圧倒的に悪玉の方が多いわけですが)進んでいきます。最近の銀行の合併もこうであったのかとさえ思われるテーマです。どの銀行がどこと合併したかはわからないほどになってきています。

山崎氏はこのころからこの銀行再編成問題に取り組んでいたとは。ドラマではそれらの話は深く追求しないでひたすら鉄平を描き続けています。私はこの作品は「華麗なる一族」の名の通り一族の話ではありますが、メインは大介、寧子、相子の三角関係。「妻妾同衾」の世界がめらめらと描かれているのがすごいところだと思います。それに鉄平がからむ、祖父の敬介が影のようについてくるのは、あくまでもそれらを引き立たせるお膳立ての気さえします。政財界を含めて銀行間の争いも脇役として見えてくるのです。

私的な、エンスー的な読み方を許してもらえるなら、山崎氏の描いた様々な「小物」「設定」に楽しませていただきました。猟銃の「ジェームス・パーディ」。鉄平が祖父からもらったこの猟銃で自殺をする。祖父がかわいがった錦鯉「将軍」130万のレンタルラジコン(ドラマ中)ル・コルビジェ式の建物、38Fのヨット子爵令嬢号。どれもとっても「華麗」でありました。そこまで取材をして描いたところがたまらなく惹かれたのだと思います。ただドラマを見て原作を読んだせいで、すべての登場人物と俳優がかさなりあってしまいました。綿貫千太郎と鶴瓶、これは脳裏に永遠に残って?しまいました。鉄平よ永遠なれ!