続 禅と日本文化 鈴木大拙著 北川桃雄訳

続禅と日本文化

この書は鈴木氏の英文の著を北川桃雄氏が和訳した本で,また岩波新書の復刊の1冊でもあるというものです。筆致が古臭い感じはしますが,言わんとするところは明快ですらあります。まず,「禅と日本人の自然愛」では「日本人の自然愛というものは富士山のあるおかげ」と言い切り,その富士山をスポーツ感覚で登り「山嶽征服」などとは冒涜だ,と怒りを表しています。征服という観念は忌まわしい。登山に成功したら「山と仲よしになった」と何故言わないのか,といささか近所のご隠居のたわごとのようにも聞こえます。しかし最近ケーブルカーで頂上近くまで行けるような山が多くなったのは便利ではありますが,少し考えさせられるものもあります。自然を本当に愛するにはこれでいいのだろうかと。

またいろいろな「禅問答」も出てきます。まさに禅問答で,いろいろな疑問や教えてもらいたいものがあり質問する。それはそのこと自体がおろかなことであり,その質問を発した自分のことを考えることが必要だともいいます。禅とは自己矛盾を手段として自己同一化を成就する鍛錬で,禅とは「心」に背いて「心」に達せんと努力するものだ。南に向いて北極星を見ようとすることだとも言っています。難しいですね。自己の存在を洞察する。すなわち「悟る」ことに近いようです。もう少し自己を知るためにも,悟るためにも学ぶことにしましょう。