フランス幻想小説傑作集 窪田般彌・滝田文彦 編 白水Uブックス

フランス幻想


「白水Uブックス」の白水社は語学教材をだしている会社で,優れた海外文学のシリーズが多くあります。この書はフランスの幻想小説の傑作を16編集めています。普段あまり外国文学を読まないので,登場人物の名前や地名,過剰な修辞語句などに辟易することが多いのですが,短編ともなると我慢?するかなで読み通しできます。また,ショートショート的な短さのため映画の予告編でも見る楽しみがあります。

D=A=F・ド・サドの「州民一同によって証言された不可解な事件」澁澤龍彦訳 は有名なサド侯爵(1740-1814)の死後に刊行された短編集からの一遍で,書かれた時期はバスティーユの獄中であろうとされています。訳者の澁澤氏は「ファウスト伝説を思わせる悪魔との取引きやオカルト現象をテーマとして採り上げて,最後にサドらいし不可解論めいた結論を付け加えているところが,いかにも19世紀のコント・ファンタスティクの先蹤たるを思わせて,この短編はささやかながら注目にあたいする」登場人物の男爵は自分の還暦になるまで幸福に生き,決して金に不自由しない,少しも衰えぬ絶倫の生殖力に恵まれることを悪魔と取り交わすのです。男ならだれでも考えそうなことではありますが,果たして60歳になったとき男爵の周りではどのようなことが起こったか?それは書き表せない事件が起きてしまうのです。やはり悪魔との取引は・・・。