日本幻想小説傑作集2 阿刀田高 編 白水Uブックス

日本幻想


日本の幻想小説と言ってもピンとこないですが,夏目漱石の「夢十夜」が入っていることで少しは想像できるものがあります。でも星 新一の「あれ」が入っているのはどうかな?
夢野久作「死後の恋」は1928年に書かれた古い作品です。ロシア大陸でロマノフ王家の末路に関する話で,日本軍の私である聞き手がリヤトニコフという若い兵と彼?が持っている宝石について話が進んでいきます。最後に赤軍に殺されてしまうのですが,リヤトニコフとは女性であって凛辱されころされます,その臓腑から採りだしてきた宝石を出してくるのです。

野坂昭如「花街てまり唄」は実に映像的です。てまりがころころと転げてくる場面からはじまり,老婆が現れる。てまりは爪先たちで,膝をかかめて腰でひょいひょいと調子をとるので女の子の腰のあたりを鍛えるのだという,足で上げまりをくぐらせる,最後はまりを着物の後ろに入れ込むが妙に刺激的だと,短編にしては少々長いが傑作です。