死をどう生きたか 日野原重明

hinohara

死をどう生きたか―私の心に残る人びと (中公新書 (686))

死をどう生きたか―私の心に残る人びと (中公新書 (686))

96歳になる今でも現役で医者を続けている驚くべき方です。高齢化社会になった日本での象徴的な人物で,また「生き方」を教えてくれる人でもあります。この書では22名の患者との関わりを日記風に書いています。そしてその人々の死を見届けたこと,その患者の晩年の生き方に触れています。このような「死に方」もあるのだということを医者の目から見た,また1個人として関わったことを淡々と述べています。最初の「死を受容した16歳の少女」から始まって,読んでいくにしたがい涙腺がゆるみっぱなしになります。若い死だけに一層悲しみが増します。昭和12年のことだといいます。「女工」「軍医」とかの言葉が出てくる時代で,筆者が最初の死を見取った患者だったようです。「死を見取った600名あまりの患者のなかで,私にとって死との対決の最初の経験であった」述べています。どれだけ印象強く残ったのでしょう。

またこの本で賀川豊彦という方も知りました。戦前のアメリカの人に知られた日本人は天皇陛下東条英機,それに賀川豊彦だと言うのです。キリスト教の伝道者,平和主義者,科学者だったと言います。このほかに「山田耕作正力松太郎鈴木大拙」などの人々との別れが語られます,最後に書の額をもらったなどと少し自慢気?なところもないではないですが。それでも通して読んでいくと,そのようなことより壮絶な死とどう向き合ったか,タイトルどおりの「どう生きたか」が語られています。