オスとメスと男と女 和 秀雄

オスとメスと男と女 (寺子屋新書)

オスとメスと男と女 (寺子屋新書)

「恋も出産も子育ても本能だけではできません」と言う,意味深長なうたい文句の帯が付いています。著者はサル研究者でもあり,「サルとヒトの生と性」の話を面白く語ってくれます。「チンパンジーはいつごろヒトになりますか?」と言う単純な質問にわれわれはどう答えることができるでしょう。子供のキラキラした瞳で聞かれると何と答えたらいいのでしょう。サルには交尾期と出産期があるが,ヒトにはそれが無くなったと言う話も面白いです。サルは秋から冬にかけて交尾期を向かえ,6ケ月弱の妊娠期を過ぎ春から夏に出産するのだそうです。要するに子育てに都合のいい時期に出産するようになっているのだそうです。

それではヒトはどうなのかというと,季節性がなくなった,その理由として2つ挙げています。衣食住の確保により環境の影響を受けずにすむようになったから。もうひとつには,たまたま季節性をもたないメスが現れ,いつでも交尾できるメスにオスもついて行って増えてきたからだと言ういわくありげな話。そうだとすると,サルにそのような突発的な遺伝子が増えてきたら,今頃はサルにも季節性はなくなっているはずなのです,どうも疑わしい。「性皮」(sexual skin)という学術用語があるそうです。「性周期にともなって赤さや腫瘍が周期的に変化する皮膚」これがサルにとっては美的感覚,性的魅力となってくるのです。ヒトには残念ながらこの性皮の変化がなくなってしまったのです。もしこれが今でも残っていたらすかさずその時期に口説く?今ではオトコが性皮の変化を意識的に見せている?このほかにも「異性を惹きつけたい」「男女の仲はややこしい」「男らしさ・女らしさ」など興味ある話をサルを例に挙げてお話してくれています。おそるべしサル学。