「かわいい」論 四方田犬彦

kawaii

「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

日本発の「かわいい」が世界を席巻しているといいます。アニメが世界で話題になっているのは最近よく見聞きします。フランスではアニメのコスプレ大会までやっているようです。作者はイタリアのボローニャという静かな町で「セーラームーン」のポスターを見てびっくりしているところから始めています。それから北京,ウィーンでも目にしています。そしてそれらはすべて「かわいい」という形容詞で呼ばれ日本発キャラクター商品の総売上は年間2兆円に達していると言います。これはれっきとした輸出産業であり,かって日本は工業製品の輸出で世界を席巻しましたが今は「かわいい」グッズが売れに売れていると言います。

作者は「かわいい」の語源から調べて,最近の大学生にもアンケートをとっています。「かわいい」の語源は「かはゆし」と言い「今昔物語」に出てきて,もっともこの時代は意味がずいぶん違って「痛ましくて見るに忍びない。気の毒だ。不憫だ」という意味だった。そのころの「かわいい」の意味に使われた言葉は「うつくし」と呼んでいたようです。「枕草子」146段に「うつくしきもの・・」が有名です。うりに歯を立てている子供の顔。雀の雛に向かって「チュッ,チュッ」と呼んでやると,こちらにピョンピョンやってくるところ。などなどかわいいのは小さな子供や動物なのです。千年の昔からかわいいものに対する親しげな眼差しというものは少しも変わっていなかったのだと言います。

また「プリクラ」はもともと「プリント倶楽部」の略だったようで,最近のプリクラで撮る写真の出来上がりには驚きがあります。まず照明が大変明るく,より美しく「かわいく」撮れます。かなり明るいレンズを使っているのでしょう。美肌でしみそばかすなどは見えません。文字やキャラクターなども自在に入れられ,お姫さまに大変身さえできます。作者 四方田氏がプリクラで撮った自身の写真を裏表紙に使っているのにも驚きでした。日本のミニュアチュールと未成熟を肯定する美学「かわいい」を世界に向けて啓蒙すべきでもある,それが文化的貢献でもあろうとも指摘しています。

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