国家の品格 藤原正彦

藤原

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

大ベストセラーとなり「・・の品格」ブームを作った書でもあります。一見過激に思える思想が次から次から出てきます。講演記録の書き直しであるため読んでいて分かりやすいし,善悪,良し悪しがはっきりしているためそれが「心地よい」と感じる読者も多いのでしょう。日本人を元気付ける書,日本人の誇りを感じさせてくれる書なのでしょう。本の帯には「すべての日本人に誇りと自信を与える画期的日本論!」とあるのもうなずけるコピーでしょう。言葉尻をとるととんでもないことを言っているように思えます。「5世紀から15世紀までの中世では,まずアメリカは歴史に存在しない,ヨーロッパは無知と貧困との戦いの「蛮族」の集まりだった。一方日本は当時十分に洗練された文化を持っていた。」「公立小学校で英語などを教え始めたら,日本から国際人がいなくなる。・・国際的に通用する人間になるためには,まずは国語を徹底的に固めなければダメです。」

作者は日本人の古来から持つ「情緒」伝統に由来する「形」を見直していこう,と言っています。そのための条件を6つ挙げています。
1)普遍的価値 2)文化と学問の創造 3)国際人を育てる 4)人間のスケールを大きくする 5)「人間中心主義」を抑制する 6)「戦争をなくす手段」になる。 また,日本の四季のある中で育った豊かな感性を育てる,「もののあわれ」と言う情緒を大事にすることも重要である。秋の虫の音を「秋が来たんだ」と感じる心と欧米人の「何のノイズだ!」と思う感性はまったく違って,日本人独特の感性が四季によって培われたといいます。さらに論調は過激になっていきます。「武士道精神の復活」とまでなります。新渡戸稲造の「武士道」を挙げ,「卑怯なことはいけない」「大きな者は小さな者をやっつてはいけない」「名誉は命より重い」ことなどが重要であり,あの日中戦争はまったくの「弱い者いじめ」だったと断言しています。
読んでいて非常に元気になっていく部分と,ちょっと頭をひねるところがありますが,これからの日本を立て直していくためにはいい教材だと思います。なにせTVドラマの「ごくせん」が視聴率No1だということですから。

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