戦後短篇小説再発見5
- 作者: 講談社文芸文庫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/10/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
あるとき昔からお世話になっている助産婦と話す機会があった。「私」はおふくろが堕胎を頼んだが,助産婦が産むことを進めて生まれた子供だったと話してくれた。そしてヒカダの話になり,助産婦もよくおふくろのヒカダを覚えていた。子供を産むときありったけの力で力むので腿の内側からふくらはぎにかけてぽおっと赤く汗ばみ,そのときのヒカダが綺麗なんだそうです。おふくろさんが亡くなって,遺体に着物の装束を着せてやっているとき裾がすべって片方の脛があらわになった。葬儀屋にちょっと声をかけ,遺体の足許にしゃがんでやせ細ったおふくろの脛に見覚えのあるヒカダを見た。「私は不意の悲しみに打たれて立ち上がった」そして「これでヒカダが消える,おふくろと一緒にヒカダも消える」と思った。