幕末インテリジェンス 江戸留守居役日記を読む

rensan2008-08-30

幕末インテリジェンス―江戸留守居役日記を読む (新潮文庫)

幕末インテリジェンス―江戸留守居役日記を読む (新潮文庫)

ここ最近は,江戸時代に滞在した外国人からみた日本の歴史,風俗や印象などが気になり濫読していましたが,日本人の目から見た江戸から明治時代への変遷の一部を書いたものに出会いました。依田学海(1833-1909)が佐倉藩(千葉県)の「江戸留守居役」時の2年間の日記「学海日録」が記されています。「江戸留守居役」とは,各藩が江戸の藩邸に設けた役職で,幕府と藩の間の公的連絡や他藩との連絡などの仕事をしていたいわゆる藩のスポークスマンでもあります。藩の代表として幕府の意向を敏速に伝えることは藩の存続にもかかわる大事な役でもあるわけです。そのような日記がなぜ注目されるのかと言うと,留守居役仲間が集まり寄り合いが度々開かれ,酒を飲んだ上での愚痴や憤懣を書きつけているところなどにあります。そこには重要な責務がある,いわゆる堅い役職の中に,真実とその裏が潜んでいるからです。

若き日の依田学海(本書より)
慶応3年10月20日 徳川慶喜大政奉還をするという報がとどき,大変なことになってしまいます。政権を朝廷に返上するということです。当時の学海の日記には「今の朝廷はいかなる朝廷ぞや。逆藩等,陰に公卿を誘して非法の政を為す。これ,君にかえすにあらず。賊にあたうるなり。惜しむべし,惜しむべし。」薩長の藩が陰で公卿をあやつっている朝廷だとしています。朝廷に政権を返すのではなく,賊(薩長)に持っていってくださいと言っているようなものだ。薩摩のクーデターなのです。NHK篤姫」の放映されている時代と重なっていきます。「篤姫」の視聴率の高さも分かる気がします,この時代面白いのです。「情報の最前線にいた留守居役の生々しい日々の記録である。そこから読み解ける明治の一知識人のかくされた青春を描いてみる」目的は,これからも多くの人の共感を呼ぶであろうと思います。

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