おまるから始まる道具学 村瀬春樹

タイトルからしてにやりとさせられる本です。主に西洋おまるからはじまり,厠ゲタ,スリッパ,湯たんぽなどに及んでいます。「ヒトの歴史は道具をして語らしめよ!」と主張する氏は,道具は言葉よりはるか先に誕生していて,言葉でヒトを語るより道具の方が歴史上正しいとの理由のようです。著者がパリの骨董屋で買った巨大コーヒーカップ?が記念すべき「最初の道具」。直径が20cmもあり 取っ手も付いているものでカップの底に大きな男の青い目玉が描かれいたのでした。ヨーロッパの人なら容易に想像つくようですが,東洋人には理解できない巨大なカップだったようです。寝室で使うポータブルおまるだったのです。前にも「環境先進国江戸」の本でも紹介されていましたが,これらのおまるに入れられたし尿は,アパートの窓から外に放り出していたようなのです。ロンドンでは窓からいきなり降ってくるものをCity Shower(都会のにわか雨)と呼んでいたそうです。(上図:著者が初めて手にした西洋おまる 下図:旧林家の草花紋染付向高便器と下駄)

厠ゲタのお話も日本独特の珍しいものです。陶器の重いゲタが厠に置いてあったりします。ここには日本の和風建築も影響して,履物を脱いで上がる床より不浄な厠では藁で編んだ草履などを使っていた。ゲタも使うようになり,歩けない履物ではない陶器のゲタも登場したのです。興味を抱かせたのは女性用立ち用便器です「サニスタンド」としてTOTOが1951年ごろに販売もしていたようです。日本では近代になるまで立小便は女性の排尿スタイルでもあったのです。そういえば祖母も立ち小便をしたのを目撃した記憶が。江戸より上方には歴史が古く,明治になって女性の立ち小便を禁止してから現在のようになったようです。男の子が立ちしょんべんを男らしいと思っていても,女性も同じように,再び立ち小便をはじめたら「男らしさ」はなんで判断するのでしょう。すでにその垣根はないのかもしれません。ここで日本と西洋のトイレでの警句。
「急ぐとも心静かに手を添えて外に漏らすな松茸の露」
Keep me Clean and use me well.And What I see I will not tell.

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