格差社会 橘木俊詔

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

「格差の何が悪いのか」「格差が拡大してもいいのではないか」が今日,公然と言われてきていて,かっての国民一億総中流の時代はなくなってきた。そのような論点から様々な統計データを掲げ,格差の現状を検証して不平等化が進行する日本社会のゆくえを問いただしています。貧困をあらわすのに「絶対的貧困」(これ以下の所得だと食べていけないという貧困)「相対的貧困」(他人と比較してどの程度所得が低いのか)二つの定義があるが,前者の場合,ここ5−6年でも大都市でも11.2から15.7%と貧困率が増加している。生活保護を受ける人や,貯蓄ゼロの数,ホームレスの数も増えてきているといいます。後者の場合はOECD貧困率調査では,日本はなんと15.3%で世界5位だといいます。これらの資料を提示して政府の言う「格差は見かけだけ」に反論しています。現在では,高齢者と若年者の貧困率が高くなっている。特に若者の貧困率は日本の不景気とその結果,失業率も高くなっていて,フリーターの数が増えている。平均年収は140.4万円だといいます。一月12万円弱で暮らすことになる。家族がいる場合はさらに深刻になるのは明らかだと言います。

最後に筆者は「格差社会への処方箋」として7項目を提言しています。 1.競争と公平の両立(北欧型のように高福祉・高負担を目指す) 2.雇用格差を是正する(職務給制度で同職務を同一賃金,ニートやフリーターへの職業訓練の実施) 3.地域の力を引き出す(企業誘致,医療・農業の育成) 4.教育の機会を奪われない(奨学金制度の充実・職業教育の充実) 5.急がれる貧困の救済(生活保護制度の見直し,失業保険制度の改善) 6.税制と社会保障制度の改革(所得税や消費税の改革,税制負担率の増加)7.「小さい政府」からの脱却(社会保障の還元率を上げる)
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