できそこないの男たち  福岡伸一

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち (光文社新書)

最近,メディアに良く登場するようになった分子生物学の福岡氏,タイトルにも惹かれて手にとってみました。最初は専門用語がかなり出てきて難解な感じでしたが「アリマキ的人生」あたりからぐっと面白みが増してきました。それにしてもこの本の各章のタイトルは一見,推理小説かと思われるタイトルつけですね。「男の秘密を覗いた女」「匂いのない匂い」「Yの旅路」などなど。

作者はなぜ男ができそこないかと論証しています。人間のデフォルト(基本仕様)は女性だったということなのです。聖書にあるようなアダムの肋骨からイヴは生まれたのではなく,完成型の女性から男ができた。人間の祖先はミミズやナメクジみたいな存在であって,そこには口と肛門がある1本の管がある。脳はその消化管にそってあり,脳ありきではなく消化管ありきなのです。人間が受精して7週間くらいになってから男女が分かれていくといいます。そこいらへんからがぜん面白くなります。
ミュラー管というのがそれまであり,7週目以降SRY遺伝子の指令から女のミュラー管は膣の上,子宮,卵管などに変化していき,一方,男はミュラー管はなくなり,割れ目を閉じる作業に入る。肛門から上に向かって一筋の縫い跡?がありペニスの裏側まで続いている俗にいう「蟻の門渡り」と呼ばれる細い筋が,縫い合わされた跡だといいます。まるでフランケンシュタイン

男は女の基本型からカスタマイズされて作られている,ところどころが急場しのぎで不細工に仕上がっているところに「できそこないの男」が存在するというわけです。アダムがイヴを作ったのではなく,イヴがアダムを作り出したというわけです。それでは最初からアリマキのような虫のようにメスだけで子供を産めばオスは必要ないではないかと考えられます。少なくとも地球ができ生命が誕生して10臆年くらいはそれでよかった。それからの気温や環境の変化がおとずれ,メスだけでは全滅する危機もあり,わずかにメスをカスタマイズしてオスを作り,生き残りにかけてきたというのです。
急場しのぎでつくられた男は,短命に終わるのもいろいろな理由ではなく生物学的に運命つけられているらしいです。そう言えば,小学校でも男の子より女の子が身長も早く伸び,勉強も出来てかなわないと思っていたのはそのせいでしょうか。女性の変形型,改良版?が男だったのですね?もし生態環境が変わったら女だけで生きていけるのかもしれません。ああ,なんと可愛そうで短命な男たちなんでしょう。

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