イタリアは素晴らしい,ただし仕事さえしなければ 加藤雅之

新書399イタリアは素晴らしい、ただし仕事 (平凡社新書)

新書399イタリアは素晴らしい、ただし仕事 (平凡社新書)

タイトル通りの内容かもしれません。いやそれ以上に政治やイタリア社会にあきれています。「こんな国,2度と来たくない!」とまで言わせるのはなぜ?古代からのイタリアのイメージが根底から覆されます。著者は時事通信社の社員として2002-6年までスイスのジュネーブ特派員としてスイス,イタリアを取材しています。

ローマ法王の死去」「トリノ冬季五輪」「ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi1936−)首相敗北の総選挙」の3話が中心になっています。特派員らしく現地に根ざした記事を書いていますが,その取材時の日本ではあたりまえだと思われることが通じないイタリア。鉄道の時刻表はあくまでも「参考」であって,出発,到着ホームの変更も日常茶飯事,アリタリア航空は遅れる,飛ばない,ストは頻発。駅,空港の自動切符販売機はしばしば壊れている。窓口では英語は通じなくイタリア語のみ。ミラノ中央駅では泥棒が終結していて置き引きやすりに遭う。商店などではつり銭に小銭がない。トイレも壊れていたり,掃除してない,標識がわかりにくくたどりつけない。もうここまで聴いたらいったいイタリアという国はどうなっているのだろうとあきれてしまいます。全てがそうではないとは思いたくなります。

ベルルスコーニ首相に対しては「なぜベルルスコーニなんて人が首相だったのか」と小タイトルで氏を攻め立てています。失言の多さでも有名だったようです。フィンランドの女性大統領について「(誘致を諦めるよう)プレーボーイのやり方で口説いた」中国に対しては「毛沢東時代に,子供を煮て肥料にしていた」「共産主義者は赤ん坊を食べる」などなど,国家に対する侮辱で外交問題まで発展した。およそ国家の代表というよりエゴイスティックな世界の大富豪の1一人だったようです。サッカーのACミランのオーナーでもあり,イタリアン・ドリームの体現者であり,イタリアでは「抜け目ない,ずる賢い」人物としてあこがれの対象だといいます。

「すべてにおいていい加減」のイメージが強いイタリアですが,ファッション,建築,音楽,スポーツカーなどでは一目を置きたくなります。長いイタリアの歴史でもダ・ヴィンチミケランジェロのような天才が何人か出現してすばらしい作品を作り,車でもマセラティー,フェラリーなどの名車を作り,経営危機にあえぎながらも作り続けていくところは賞賛に値します。イタ車好きでは,エンジンがあってなんぼ,電気系統のトラブルなんてトラブルではないみたいな自虐的な愛好家が多いのもうなずけます。最後に著者はイタリアは「普通でない国であり少し離れてみているのがちょうどいい国なのかもしれない」としめています。


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