江戸のセンス 荒井 修 いとうせいこう

江戸のセンス ――職人の遊びと洒落心 (集英社新書)

江戸のセンス ――職人の遊びと洒落心 (集英社新書)

扇子職人、荒井修氏からいとうせいこう氏が江戸職人や庶民のセンスや発想,粋のスピリットをお伺いする形をとっています。「曲尺 さしがね」をつかって円周を知るなんて言うのは初めて知りました。さしがねの丸目で円の直径を計り表目の同じ目盛りがその円周の長さになる。丸目と表目は1目盛り違っていて,円周率を知らなくても円がえがけるのです。紋章などは丸の中に八角形や三角などいろいろの形があります。内接する一番おおきな図を描くにもこつがあるわけです。江戸の文化のすごいところは,百万都市というけど,半数近くが参勤交代で地方から来た人々だった。入れ替わり立ち替わり,帰って地方に江戸のことを伝え,江戸はまたそこから影響を受けててこのダイナミズムが江戸文化をすごいものにしていったといいます。現在は東京の文化?がそのまま地方に伝わるだけでつまらないとも言っています。

また現代はブランドのロゴを見せたくてしょうがないが,江戸では表は無地で普通のものでも,凝った裏を見られて「お洒落だね。いいね」と言われて「おうそうかい」とあえて気がつかないふりをするのが粋なんですね。千社札を貼る道具もあるそうです。四角い箱には千社札はもちろんのこと,貼る場所の汚れを拭くてぬぐいやのり,刷け,それに伸縮自由な刷けのついた棒があるといいます。そういえば高い神社などにも天井にも所狭しと張ってあります。本堂のほうに札の頭を向けて貼るのが正式らしい。品のいい粋とは,こざっぱりしていないといけない。江戸人が一番大切にしているのは「小体 こていな」なことだそう。「小」粋な女が「小」鉢に入ったつまみを持ってきてくれるのがいいのであって,大きいのは野暮なんですね。小粋でなきゃいけないのが,江戸のセンスなんですね。

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