江戸の旅 今野信雄

rensan2010-02-17

江戸の旅 (岩波新書 黄版 349)

江戸の旅 (岩波新書 黄版 349)

江戸時代の旅はさぞ窮屈だっただろうと思われがちですが,「お伊勢参り」に代表されるように大勢の人々が,旅を楽しんでいたようです。様々な旅の紀行文があるなか「東海道中膝栗毛」(1802年十返舎一九) はベストセラーになっています。今でいうとなんでしょう?国内版「地球の歩き方?」「るるぶ?」。宿場の料金,名所旧跡,人足賃,お土産等々が詳しく記されています。東海道に続き,金比羅木曽路善光寺草津中山道版,当時の庶民の旅行熱を反映していたようです。頂点は伊勢神宮へお参りに行くことでした。遷宮の年にあわせて爆発的に流行したといいます,現代では2013年が20年目にあたりますのでさぞかしこの年は「お伊勢参り」が大ブームになることでしょう。

もちろんお参りに行くのが目的ではありますが,「旅行」の楽しみはいろいろとあったようで,記録に残っているものを読んでいくと面白いものがあります。今で言うワンダーランド,ディズニーランドに遊びに行くようなもの?享保3年(徳川吉宗の時代)に正月から4月にかけて42万7千人が伊勢神宮へ参拝したとの記録があるようです。「おかげ参り」に行くには奉公していても突然これに加わってもとがめられないし,子どもまでもが参加していたといいいます。関所でも,寛大であったため子供,女性が自由に出かけたようです。文化7年に発行された八隅蘆庵の「旅行用心集」にある旅先の心得から面白いものを挙げています。「道中で道連れになった人がいかにも実直そうに見えても,同宿したり,食物や薬等をやりとりしてはいけない(人を見たら泥棒と思え)」「道中は色欲をつつしむべし。売女に湿毒あり」「船酔いする人にははじめおおいに嘔吐してその後に喉が渇くから,そのときは幼児の便か,あるいは大人の小便を飲ませるのがいい。ただし水を飲ませると即死する」これはとても信じられない教訓ですね。

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